「手を入れただけなのに噛まれた。
嫌われているのかな」。
ハムスターを迎えてしばらくのあいだ、多くの人が一度はこう感じます。
けれども、ハムスターが噛むのは、人を嫌っているからではなく、怖い・驚いた・確かめたいのどれかであることがほとんどです。
噛む場面を見分けて、その原因を一つずつ減らしていくと、噛まれる回数はかなり少なくなります。
噛み方の強さで、気持ちの見当をつける
同じ「噛む」でも、軽く歯を当てるだけのときと、強くかんで離さないときでは、ハムスターの気持ちがまったく違います。

まずは噛まれたときの強さと場面を思い出してみると、何を変えればよいかが見えてきます。
| 噛み方 | よくある場面 | 考えられる気持ち |
|---|---|---|
| 軽く歯を当てて、すぐ離す | 差し出した指先にふれたとき | 食べ物かどうか、においを確かめている |
| 強くかんで、なかなか離さない | 急につかまれた、寝ているところを起こされた | 怖くて身を守ろうとしている |
| 何度もくり返し噛みに来る | ケージの中に手を入れたとき | 自分の場所に入ってきたものを追い払いたい |
| ふだん噛まない子が、急に噛む | 体の同じ場所を触ったとき | 痛みや体の不調があるかもしれない |
軽く歯を当てる「確かめ噛み」は、慣れる途中でよく見られるもので、慣れが進むにつれて減っていくことが多い噛み方です。
一方で、ふだん噛まない子が急に強く噛むようになったときは、性格より体調の変化を疑います。
噛みやすい場面と、その理由
ハムスターは、野生では鳥やキツネなどに狙われる側の小さな動物です。
そのため、上から近づいてくる大きなものや、急な動きには、身を守ろうとする反応が強く出ます。
迎えてから間もないころ
ペットショップから家に来たばかりの時期は、においも音も明るさも、すべてが初めてのものばかりです。
この時期のハムスターは、ちょっとした物音にも身構えていて、近づいてくる手を敵と区別できません。
迎えて数日〜1週間ほどは、手を入れるのは餌と水の交換、汚れた部分の掃除だけにとどめるのが基本です。
眠っているときや、物音のあと
ハムスターは昼間に眠り、夕方から夜にかけて起き出す夜行性の動物です。

昼間に巣箱をのぞいたり、寝ているところを触ったりすると、寝ぼけたまま身を守ろうとして噛むことがあります。
掃除機の音やドアの閉まる音のあとも、しばらくは気が立っているので、触るのは落ち着いてからにします。
ケージの中に手を入れたとき
ハムスターにとって、ケージの中は自分の縄張りです。
とくに巣箱のまわりや、餌を貯めている場所に手が近づくと、自分の場所を守ろうとして噛みに来ることがあります。
ケージの外に出たとたんにおとなしくなる子もいて、こうした子では、ケージの扉を開けて、自分から出てくるのを待つほうが噛まれにくくなります。
手に食べ物のにおいが残っているとき
パンやお菓子、果物を触ったあとの手は、ハムスターにとって「食べ物のにおいがするもの」です。
差し出した指を餌と間違えて、かじってしまうことがあります。
ハンドクリームや香水の強いにおいも、知らないものとして警戒されやすいので、触る前は石けんで手を洗い、においの少ない手で接するようにします。
体のどこかが痛いとき
お腹やお尻、足など、触ったときに決まった場所で噛むなら、そこに痛みがあるのかもしれません。
食欲が落ちている、歩き方がおかしい、毛並みが乱れているといった様子もあれば、慣らしは中断して、動物病院で診てもらいます。
噛む前に出やすいサイン
ハムスターは、多くの場合、いきなり噛む前に「これ以上近づかないで」という合図を出しています。

次のような様子が見えたら、手を引いて、その日は無理をしないほうが安全です。
- 耳を後ろに倒して、体を低くして固まっている
- 「ジジッ」「キーッ」と鋭い声で鳴く
- 後ろ足で立ち上がって、こちらをじっと見ている
- 仰向けになって、歯を見せる
- 体をふくらませて、毛が逆立って見える
仰向けで歯を見せる姿は、かわいらしく見えることもありますが、強い警戒のサインです。
お腹をなでようとして手を出すと、噛まれやすい場面なので注意します。
手に慣らしていく5つの段階
慣らし方には、日数で決まった手順はありません。
今の段階で落ち着いて過ごせるようになったら、次の段階へ進むという進め方が、結果としていちばん早く慣れてくれます。
ケージのそばで静かに話しかけて、人の声と気配に慣れてもらいます。
この時期の掃除は、汚れた部分を取り替える程度にとどめます。
次へ進む目安:人がそばにいても、巣から出てきて餌を食べたり、回し車を回したりする。
洗った手を、ケージの扉のあたりにそっと置いて、近づいてくるのを待ちます。
手を動かさず、ハムスターのほうからにおいをかぎに来るまで待ちます。
次へ進む目安:手に寄ってきて、鼻を近づけてにおいをかぐ。
ひまわりの種などのおやつを指先でつまみ、上からではなく、正面の低い位置から指先ごとそっと差し出します。
受け取ってすぐ巣に持ち帰るうちは、まだこの段階です。
次へ進む目安:受け取ったその場で食べる、または次をねだりに来る。
手のひらを床材の上に平らに置き、まんなかにおやつを1つ置きます。

自分から手のひらに乗ってきたら、そのまま動かさずに食べ終わるのを待ちます。
次へ進む目安:手のひらに乗っても、すぐに降りずに過ごせる。
手のひらに乗っているときに、床から数cmだけゆっくり持ち上げます。
最初はすぐ下ろし、少しずつ時間をのばします。
持ち上げるのは、必ず床に座った低い位置で行います。
どの段階でも、噛まれたり、怖がるサインが出たりしたら、1つ前の段階に戻ります。
手乗りまでにかかる期間は、数週間で進む子もいれば、何か月もかかる子もいて、個体差がとても大きいところです。
慣らしで使うおやつも1日の餌の一部なので、ひまわりの種なら1日2〜3粒までにおさめます。
生の果物は週に1〜2回、乾燥ミルワームは週に数回1〜2匹といったおやつの種類ごとの頻度に合わせておけば、ほかのおやつもあげる日に与えすぎずに済みます。
噛まれてしまったときの対応
慣らしの途中で噛まれることは、どれだけ気をつけていても起こります。

大切なのは、噛まれた瞬間の反応で、ハムスターに「手は怖いもの」と覚えさせないことです。
驚いて手を振り払う(ハムスターが飛ばされて落ち、けがをすることがあります)。
大声を出す、叩く、息を吹きかける(怖さが増して、次からもっと噛むようになることがあります)。
噛まれたからといって、すぐに厚手の手袋でつかむ(つかまれる怖さが残りやすく、慣れが遠のきます)。
噛まれたら、痛くても手を大きく動かさず、そっと床に近い位置まで下ろして、ハムスターが自分から離れるのを待ちます。
離れたら、その日の慣らしは終わりにします。
噛まれた傷の手当て
噛まれた傷は、すぐに石けんと流水でよく洗い、清潔なガーゼなどで押さえて血を止めます。
ハムスターの前歯は鋭いので、小さくても深い傷になることがあります。
傷が赤く腫れてきた、痛みや熱っぽさが続く、といったときは、医療機関を受診してください。
まれに、ハムスターに噛まれたあと、じんましんや息苦しさ、顔のほてりなどのアレルギー反応が出たという症例も報告されています。
噛まれたあとに息苦しさや全身のじんましんが出たときは、すぐに救急の受診を考えてください。
とくに子どもがハムスターと触れ合う場合は、大人がそばについて、噛まれたらすぐ手当てできるようにしておきます。
手に乗らない子との暮らし方
時間をかけても、手に乗るところまでは慣れない子もいます。

ロボロフスキーのように臆病で素早い品種や、大人になってから迎えた子では、とくにその傾向が出やすいと言われます。
手に乗らないからといって、懐いていないとは限りません。
人が近づくと巣から出てくる、声をかけると顔を向ける、手から餌を受け取る、といった反応も、ハムスターなりの慣れのかたちです。
手に乗らない子のお世話は、触らなくても進められる形に整えると、お互いに負担が少なくなります。
ケージの掃除で移動させたいときは、コップや小さな容器を床に寝かせて置き、自分から入ってもらう方法があります。
体重を量るときも、はかりの上の容器におやつを入れておけば、手で持たずに済みます。
無理に抱っこを目指すより、今できる距離で、怖がらせずに毎日お世話を続けることが、結果として噛まれない関係につながっていきます。

